秋田県湯沢市・泥湯温泉奥山旅館の3日後に。
ネズミ色~灰色の冴えない色のお湯は仄かな鉄の味。
微かに漂う硫黄の香り。
草木の生えない黄白色の崖に舞い降りるカラス。
誰もいない露天風呂。
夏の北国の遅い夕暮れは中々訪れない。
ここでの時の流れは明らかに遅い。
近くで入浴していた初老の温泉好きと、「どこに行った」「あそこは良かった」という話を永遠としながら、
「また何時か何処かで会いましょう」と声を掛けられる。
P.S.
20代の男の店員は、私が見たところ恐らく数名しかいなかった。私と話した若い男が死んだのかもしれない。
それから、少なくともこの場所では、件の温泉好きとの再開は叶わなくなった。
そして、この写真はこの建物の遺影となっちまったようだ。